製薬会社の将来性と成功要因を解説します

こんにちは、きよまさです。

製薬会社に就職したいけど、将来性ってどう見ればいいんだろう?

本記事はこういう人におすすめ

・これから製薬会社に就職を考えている人 

・これから製薬会社に転職を考えている人 

・転職を考えている現役MRの人  

本記事を書いている人
医薬品卸で数年間働き、その後内資系製薬会社→外資系製薬会社に転職しました。 現在、外資系製薬会社でチームリーダーとして大学病院を担当しています。
この記事を読むとどうなるか
製薬会社の将来性を予測することができる
結論
開発資金にいくら投資をしているか見よう

これから就職活動をする学生や製薬業界に転職を考えている人、現役MRの人でも各製薬会社の将来性の見方がよく分からないって人がいると思います。

今回は最新の製薬会社ランキングから製薬業界での成功要因は何か?そして将来性を見ていきたいと思います。

製薬会社の売上ランキングとシェアの推移

国内市場ランキングは外資系メーカーがシェアをとっている

 引用:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17811/

製薬会社には内資系メーカーと外資系メーカーがあります。日本の会社か外国の会社か?ということですが、ご覧のように日本の製薬市場の上位10社のうち70%が外資系メーカーがシェアをとっています。

そして注目すべきは、上位10社の2010年から2019年にかけての伸び率です。

外資系は売上金額が21.9%伸びているにもかかわらず、内資系は38.9%ダウンしています。

詳しく会社ランキングを見ていきます。

 引用:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17811/

お分かりいただけると思いますが、ファイザーが売上高でトップです。2位の中外製薬もロシュグループですので外資系になります。そして3位にようやく内資系の代表、武田薬品が入ってきます。

ポイント
製薬業界は外資系製薬会社が圧倒的にシェアをとっており、近年ますますその傾向が強くなっている

世界市場ランキングでも内資系メーカーは苦戦している

【2020年版 製薬会社売上高世界トップ10】(集計対象:2019年12月期決算※一部日本企業は20年3月期)(%は前年比、公表通貨ベース): *ロシュ(スイス)618.69億ドル/8.1% |ファイザー(米)/517.50億ドル/▲/3.5% |ノバルティス(スイス)/474.45億ドル/6.0% |メルク(米)/468.40億ドル/10.7% |*GSK(英)/431.02億ドル/9.5% |J&J(米)/421.98億ドル/3.6% |*サノフィ(仏)/404.66億ドル/4.8% |アッヴィ(米)/332.66億ドル/1.6% |*武田薬品工業(日)/302.00億ドル/56.9% |ブリストル(米)/261.45億ドル/15.9% |※各社の業績発表を元に作成。J&Jは医療用医薬品事業。*は公表通過から米ドル換算(レートは19年平均)
Answers News記事より引用 URL: https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18365/

世界規模で見ると、真のグローバルメガファーマは武田薬品くらいです。

武田薬品はシャイアーを買収して、TOP10に入りました。2019年は16位だったことを考えると、M&Aによる規模の拡大の成果です。

しかし武田薬品は多額の借金を抱え込んでしまい、最近早期退職やアリナミンVで有名なOTC部門を売却することが報道されています。シャイアー買収が成功だったかは今後明らかになっていくと思います。

ポイント

・日本の製薬会社の多くは海外で苦戦している  

・世界規模では欧州VS米国という構図になっている  

・武田薬品の動向が注目される  

日本の製品別売上高ランキングの変化から言えること

主力の医薬品がプライマリーからオンコロジーやスペシャリティに移行し、MRも減り続けている

Answers News記事より引用

製品別にみていくと、2019年度の上位10製品のうち6製品が外資系メーカーの医薬品です。(オレンジ色が外資系製薬会社が創製した医薬品です)。

2010年度は上位10製品のうち6製品は内資系製薬会社が創製した医薬品ですので、約10年で構図が逆転した結果になっています。加えて2010年度のTOP10医薬品のうちすべてが生活習慣病薬でした。

1位が血圧を下げるブロプレスというお薬です。プライマリー製品全盛の時代です。この時は各社の戦い方はシェアオブボイスです。それに伴いMRの数も増加していました。

MR数の推移。過去最高数の2013年度:6万5,752人。2014年度:6万4,657人(前年比▲1,095人)。2015年度:6万4,135人(前年比▲522人)。2016年度:6万3,185人(前年比▲950人)。2017年度:6万2,433人(前年比▲752人)。
Answers News記事より引用 URL: https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14545/

ご覧のように2014年からMRの人数は減り続けています。今でもそうです。これは各製薬会社の柱となる医薬品が生活習慣病薬からオンコロジーやスペシャリティに移行し、戦い方がシェアオブボイスではなくなり、MRの人数がそこまで必要ではなくなってきたからです。

2020年現在、シェアオブボイスは循環器領域のDOACや糖尿病領域のDPP4、SGLT2くらいです。

MRはいらないの?

2019年をみるとTOP10のうち4製品が抗がん剤です。1位はMSDのキイトルーダです。売れ筋がプライマリーからオンコロジーに変化しています。

これはどういうことかと言うと、製薬企業の収益源に変化が起きているということです。

これからどういう医薬品開発のニーズがあるのか?

グラフ
製薬協HPより引用:http://www.jpma.or.jp/about/issue/gratis/guide/guide18/18guide_03.html

生活習慣病はこれまでの製薬企業の努力で治療満足度が高い医薬品が揃っています。上図にあるように多くの生活臭病の治療満足度と薬剤貢献度は高いわけです。

その結果、日本の心疾患による死亡率は減り続けています。これは薬剤の満足度が高いことに加え、日本の循環器専門医のレベルが高いことによります。

しかし、膵ガンやアルツハイマー、認知症などの疾患は未だに決定的な医薬品がなく、治療満足や薬剤貢献度も低いです。これは2020年も変わっていません。

これからの製薬会社の収益源は、「オンコロジーや治療満足度がまだまだ低い疾患、希少性が高いスペシャリティ薬」に移行していくと思います。

そういったお薬の特徴は高分子で複雑な構造を持っているため、多額の開発費用が掛かってきます。しかし、製品化に成功すると高額な薬価がつきます。

有名な例で行くと小野薬品工業の「オプジーボ」です。発売当初、100㎎10ml1瓶で72万9,849円の薬価がつきました。これは社会的にも注目されましたし、今では開発者の本庶先生と小野薬品が特許権で争っていることで有名です。

本庶氏が小野薬品を提訴 産学連携の契約、工夫必要

記事:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60591970Z10C20A6EA3000/

業界ルールの変化が起きている

市場拡大再算定ルールの導入

オプジーボが登場した時くらいから、高額な薬価が問題視され始めるようになりました。そこで厚労省は「市場拡大再算定」というルールを導入しました。

これは簡単に言うと「売れすぎたら薬価を大きく下げるからヨロシク!」というものです。

オプジーボの例で見ていきましょう。

2014年9月
薬価収載
2017年2月
緊急薬価改定
2018年4月2018年11月
729,849円364,925円278,029円173,768円

オプジーボは2016年に1,000億円を超える売上高を叩き出しました。そこで、厚労省は「市場拡大再算定」で緊急薬価改定を発動させ、薬価を半分に値下げしました。そして発売からわずか4年あまりで薬価が4分の1になっています。

MRとしてこれはやりすぎのような気がします。

もし、薬価が大きく下がることがなければ、オブジーボの売上は国内だけでも2,000~3,000億円は行っていたかもしれません。

国の医療費を考えれば抑制に働きますので良いことですが、企業側からすれば、何も悪いことをしていないのに売上高が激減してしまうのでたまったものではありません。

「売れすぎてもダメ」で「売れなさすぎてもダメ」と経営戦略の舵取りが難しい環境になっています。

販売情報提供活動に関するガイドラインが導入された

2019年4月1日から販売情報提供活動に関するガイドラインが発出されました。

これは分かりやすく言えば、

ガイドラインのメッセージ

製薬会社は科学的根拠がある情報提供をしろよ!できなければ罰を与えるぞ!

例えば、MRが薬を使ってもらいたいがために、悪いことは何も言わずに良いことしか言わない。適応がないのにあたかも適応があるかのように情報提供をしたりしたらダメってことです。

このガイドラインを浸透させるため、厚労省は現場の先生にMRのモニタリングを依頼しています。覆面調査のようなものです。

誰が覆面調査員か分からないため、ガイドラインを守らなければいけないという強迫観念が出てきます。これが結構効いています。

現役MRでありもしない効果や誇大広告をしている人はほとんどいないと思います。

このガイドラインが発出されたことにより、シェアオブボイスの時代は一部を除き、ほぼ終焉を迎えた。加えてMRができる範囲も以前より狭くなり、仕事のやりがいが減っている。

コロナで訪問規制がより強化されている

コロナ禍でほとんどの病院は訪問ができなくなりました。コロナが収まってもこの流れが止まることはないと個人的に思います。

以前、この件について詳しく記事を書いていますので、興味がある方はご覧ください。

ポイント
病院の訪問規制が強まることでMRの人数は今ほど必要がなくなる

製薬会社のマーケティングはビジネスをリードできるか?

一般的な企業では、商品が悪くてもマーケティング次第では売上を伸ばすことは可能です。つまり、マーケティング部門が優秀であれば、将来性に良い影響を与える要素になってきます。

では製薬業界のマーケティング部門の強さは将来性に影響を与えるのでしょうか?

ポイント
マーケティング部門が優秀でも製薬業界は出来ることが限られていて、その強弱は成功要因とならない

一般的なマーケティングの流れ

セブンカフェを例にとりマーケティングの基本的な流れを見ていきたいと思います。

一般的なマーケティングの流れ

・市場機会の特定をする  

・セグメンテーションとターゲティングを決める  

・ポジショニングを決める  

・マーケティングミックスを決める  

①市場機会の特定

外部環境と内部環境を分析し、自社にとっての市場機会を特定します。

外部環境・・・コーヒーはすでに国民的飲料であり習慣的に飲まれている

内部環境・・・店舗数はコンビニ業界でも最も多いため、バイイングパワーと影響力がある

②セグメンテーションとターゲティング

戦う市場を細分化し、標的顧客を選定する

年齢問わずに、習慣的にコンビニに立ち寄っているコーヒー好き

③ポジショニング

顧客に商品を魅力的に見せる

毎日気軽に買える美味しいコーヒー(価格・場所)

④マーケティング・ミックス(4P)

商品コンセプトを元に最適施策を考える

【製品】厳選されたアラビカ豆100%・ドリップコーヒー式・セルフ式・シンプルなカップデザイン

【価格】100円~

【流通】セブンイレブン全国展開

【広告宣伝】CM・店頭POPなど

上記のような流れで立案した施策を実行し、修正を行っていき、PDCAサイクルを回すというのが、一般的なマーケティングの基本的な流れになります。

ただのコーヒーでもマーケティングが優れていれば、大ヒット商品になります。

製薬会社のマーケティングの流れ

製薬会社のマーケティングの流れを見ていくと

①市場機会の特定

外部環境と内部環境を分析し、自社にとっての市場機会を特定

製薬会社も同様であらゆる情報ソースを駆使して、定量調査、定性調査を行います。

外部業者から市場データを買い、学会のKOLにインタビューをしたり、患者さんにインタビューなどをして、あらゆる角度から情報を集めます。

そして、その市場でどう戦えば競合に勝てるのか?を考えていきます。

②セグメンテーションとターゲティング

戦う市場を細分化し、標的顧客を選定する

製薬会社の戦う市場とターゲティングはある程度決まっています。

例えば、肺がんの薬であれば、呼吸器市場で、肺がんの患者さんの治療にあたっているDrとなります。

今は個別化治療の時代ですので、検査部や放射線科の先生も巻き込みながら営業をしていきますが、最終的に薬を処方するのは医師ですので、最重要ターゲティングは医師になってきます。

③ポジショニング

顧客に商品を魅力的に見せる

製薬会社も同様で、先生に「あの患者さんに薬を処方してみたい」と思ってもらうことが必要です。

そのためのポジショニングを確立する必要があります。ここでおおよその処方患者像を明確にしていきます。

④マーケティング・ミックス(4P)

商品コンセプトを元に最適施策を考える

製薬会社のマーケティングはこのマーケティングミックスに制限がかかっています。なぜかと言うと

【製品】薬の開発には莫大なお金と時間がかかりますので、簡単に薬を開発できません。

【価格】薬価として国から決められています。病院への納入価格も製薬会社が関わることができません。

【流通】医薬品卸を通じて行いますので、基本的には、何もできません

【広告宣伝】M3やケアネットを通じて広告を出していきます。引用元のデータを発表された先生に許可を得て、MRが使う資料などを作成します。また、Web講演会の企画運営や全国講演会なども企画運営をします。

見てお分かりのように、マーケティングミックスの要素において、広告宣伝(promotion)をメインに仕事をしていくことになります。

顧客から「こういう薬があったらいい」という現場の声を拾って創薬につなげることもあるかもしれませんが、それは経営戦略の話になってくるので、マーケが決めることはできません。

ですので、製薬会社のマーケティングは一般企業のマーケティングに比べて、できることが少ないうえに、制限がかけられています。

製薬業界の成功要因は何か?

医薬品業界の成功要因は「新薬の開発力」です

つまり「新薬を開発するためのお金をどれだけ投資しているか?」が重要となってきます。

開発費用が年々高騰してきている

新薬の創出には多額の研究費用がかかってきます。しかも、年々研究にかかる費用が高騰してきています。

開発費(単位は億)
会社名2011年2019年
1ノバルティス7,88510,010
2ファイザー7,6658,807
3ロシュ7,63813,664
4メルク6,85910,727
5ジョンソンエンドジョンソン6,5709,291
世界の製薬会社の開発費 2011年度TOP5

研究費用が増えているから、その分、新薬が創出されているかというとそうではありません。

新薬の種が医薬品として発売される確率は非常に低いです。そのため多額の開発費がかかってきます。

どれだけ開発費に資金を投入しているかで製薬会社の将来性はある程度予測可能になります。そしてパイプラインを見ることで方向性が分かります。

内資系と外資系の開発費の違い

内資系製薬会社と外資系製薬会社の2020年度版の開発費TOP10 が下記になります。

会社名開発費(億円)会社名開発費(億円)
1武田薬品4,924ロシュ14,013
2アステラス製薬2,242メルク10,761
3大塚HD2,158ノバルティス10,249
4第一三共1,975ギリアド9,926
5エーザイ1,401ジョンソンエンドジョンソン9,630
6大日本住友1,151ファイザー9,429
7田辺三菱794サノフィ7,355
8小野薬品677アッヴィ6,984
9協和キリン535ブリストルマイヤーズ6,702
10塩野義製薬472アストラゼネカ6,605
合計16,329合計91,654

シャイアー買収により、売上高は世界のTOP10に食い込んだ武田薬品でさえ、開発費用はTOP10に入っていません。

単純に内資系製薬会社の開発費TOP10の合計と外資系製薬会社のTOP10の合計を比較すると、その差は5.6倍と大きな開きがあります。

ポイント
製薬業界の成功要因は新薬の開発力。外資系製薬会社の方が内資系製薬会社よりも圧倒的に開発に投資している資金が多い。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

製薬業界は営業部門がいくら優秀でも、優れた医薬品を出し続ける企業体力と開発費がなければ、成功することが難しい業界です。

そして何より現場の最前線で戦っている私たちMRを取り巻く環境が目まぐるしく変化しており、MRができることに制限がかけられています。コロナ禍でますますその傾向が強くなっています。

開発費用だけ見れば、外資系製薬会社がこれからも国内の製薬業界を圧巻することは間違いありません。

そしてパイプラインに未だ解決されていないアンメットニーズが高い有望な医薬品の種があれば、将来性はあります。

これから製薬業界に就職を考えている人や現役MRの方で転職を考えている人は、希望している製薬会社の開発費やパイプラインを見て将来性があるのかどうかを分析することをおすすめします。

それでは!

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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