「なんでGSKはメディセオと取引することをやめたの?」
「自社医薬品の薬価を守るためです」
「これから医薬品卸はどうなるの?」
「過剰な価格競争が続けば経営破綻します」
2019年、ノボノルディスクがGSKと同様にメディセオとの取引停止をしていますが、医薬品関係者に与えるインパクトはそれ以上です。
ノボノルディスクとGSKは企業規模や売上が違い、GSKの方が規模が大きい会社です。
今後、外資系大手が医薬品卸との取引を停止する流れが生まれてくるかもしれません。
まずはメディセオとノボノルディスクファーマ、GSKがどういう企業なのかを解説します。
医薬品卸のメディセオとは?
メディセオとはメディパルホールディングスグループに属している医薬品卸企業になります。
メディセオを含むメディパルホールディングスは国内医薬品卸売上高ランキングNo.1です。
↓2021年3月期決算発表資料↓


日本で一番規模が大きい医薬品卸ってことです
日本一のメディセオが外資系製薬会社のノボノルディスクファーマとGSKから取引停止されるって
今までの医薬品業界の歴史の中ではありえないことなんですね。
頑張って頑張って日本一になったら、取引停止を言い渡されるとか
もはやドSです。フリーザ様です。
そして、このメディセオがとうとう早期退職を始めると報道されました。
ノボノルディスクファーマとGSKからの取引停止、早期退職、こういったことを考えると、
MSの将来性が明るいと言える状況ではありません。
今後も、厳しい状況が続いていくものと考えられます。
MRも将来は明るいとは言えませんが、MSはMRよりも厳しいと思います。
給料が減っているという話も聞きます。
MSの年収についてはこちらの記事で解説しています。
ノボノルディスクファーマとは?
ノボノルディスクファーマの本社はデンマークです。
MRの方ならご存じかと思いますが、糖尿病領域に特化した製薬企業で、日本での売上高は約900億円です。
国内No1売上高は武田薬品で、3兆3,000万円(海外売上高含む)ですので、規模としてはそこまで大きくありません。
ゾルトファイ配合注(インスリンとGLP-1製剤の配合注)
ビクトーザ(GLP-1注射)
トレシーバ(インスリン)
ライゾデグ(インスリン)
インスリンで糖尿病領域に貢献している歴史もあり、糖尿病専門の先生方にとても強い製薬会社です。

他にも成長ホルモンや血友病の製品がありますが、ノボノルディスクファーマと言えば糖尿病!!って言うイメージですね。
糖尿病に特化している製薬会社は他にもイーライリリーなどがあります。
糖尿病=ノボ、リリーって感じです。
イーライリリーと言えば最近は早期退職を募集したという事で有名ですね。
しかし、医薬品市場全体で見ると、売上高は大きくありませんので、医薬品卸にとってノボノルディスクファーマから取引停止をされたところで経営に対してそこまで大きな影響はないと思います。
また糖尿病に特化していますので、MSと連携を密にするような仕事内容ではないため、医薬品卸でノボノルディスクファーマのMRを見かけることもほとんどありません。
GSKとは?
GSK(グラクソスミスクライン)の本社はイギリスです。
日本の売上高は2,234億5,900万円で、国内医薬品売上高ランキングでも9位の大手外資系製薬会社です。
世界でも5位なので、メガファーマです。

GSKと言えば昔から呼吸器領域に強いイメージですね
テリルジー(COPD治療薬)
アドエア(喘息治療薬)
ヌーカラ(重症喘息治療薬)
ベンリスタ(全身性エリテマトーデス)
GSKと言えば、過去にもMRの売上目標を撤廃したり、講演会の医師への謝礼を禁止(現在では復活)したりと、いい意味でも悪い意味でもとんでもないことにチャレンジする会社です。
そして今回、メディセオ、エバルス、アトルのメディパルグループの他、中北薬品、岡野薬品、マルタケ、新生堂、宮崎温仙堂商店の合計8社との取引を停止すると発表しています。
取引停止された卸は
「は?マジふざけんな!」
って感じで怒っています。
呼吸器領域はGSK以外にもアストラゼネカ、ノバルティスファーマ、サノフィなど競合ひしめく領域ですので、ノボノルディスクファーマとは違い、MSと密に連携をとっているMRも多くいます。
MSにとっても身近な製薬会社だと思います。
そして外資系は内資系よりも開発パイプラインが豊富で将来性があります。
個人的に考えるおすすめの外資系製薬会社はこちらの記事で解説しています。
ちなみにこちらの記事で詳しく解説していますが、よくネット上に落ちている「製薬会社の就職偏差値ランキング」は信じてはいけませんよ!
そんな大手外資系が取引を停止すると発表したことは非常にインパクトが大きい出来事です。
なぜノボノルディスクファーマとGSKは一部の医薬品卸と取引を停止するのか?
現在の日本の医薬品市場は世界の医薬品市場と比べて成長性は期待できません。
毎年の薬価改定や、特例拡大再算、人口減少など、製薬会社にとっては向かい風が吹きまくっています。
しかしまだまだ日本の医薬品市場というのは世界でも有数の巨大市場です。
外資系製薬会社も日本のマーケットに注力しています。
新薬を創出すること以外に日本の医薬品市場で生き残っていくために必要な事は以下のようになります。
・薬価を維持して売上高をなるべく保つ
・利益を守るためにコスト削減をする
薬価の維持に必要なこと
医薬品の納入価格を安くしない!!
薬価を維持するためには、医薬品の納入価を安くしないようにしなければいけません。
医薬品の薬価は今後毎年改定される予定です。
基本的に毎年薬価が下がっていくことになります。
そして薬価の下げ幅を決めるのに医薬品の納入価(実勢価格)が肝になってきます。
例えば、薬価が100円のAとBの医薬品があったとします。
日本全体でAの平均納入価が80円、Bの平均納入価が70円とします。
薬価改定の時には納入価も参考にして次の薬価が決まります。
この場合は、AよりもBの方が納入価が安いため、次回の薬価はAよりもBの方が安くなってしまいます。
ですので、製薬会社としては薬価を守るため、納入価格を安くしたくありません。
しかし、製薬会社は医薬品の価格交渉は禁じられており、すべて医薬品卸が行います。

ここがポイントです!価格を安くするもしないも医薬品卸にかかっているんです!
しかし、現在ではこの価格競争が医薬品卸間で熾烈になっていると聞いています。
2021年もそれは続いています。むしろより過剰になっています。
これはJCHOの談合問題がきっかけになっています。
談合問題についてはこちらの記事で解説しています。
薬価を維持するために納入価を安くしてほしくない製薬会社
VS
価格競争に勝つために納入価を安くせざるを得ない医薬品卸
製薬会社がいくら言っても、価格競争が緩和するとは思えません。
医薬品卸も売上高を伸ばすために、シェアをとることが重要だからです。
こういう事態だと、特に外資系製薬会社は本国からの指示もあり、取引する医薬品卸を絞って、過剰な価格競争から自社医薬品を守るオプションは当然考えているはずです。
それをノボノルディスクファーマとGSKは実行に移したということですね。
利益を守るためのコスト削減
コスト削減というとまず真っ先に人件費の削減が考えらえます。
しかし、製薬会社にとって物流コストも削減の対象になってきます。
今回、日本一の医薬品卸との取引を停止することによって、おそらくかなりの物流コストを削減できるはずです。
どれだけのコストカットが出来るのかは分かりませんが、GSKにとって今回の取引停止で得られるコスト削減効果は魅力的だったから実行に移すのだと思います。
今後も医薬品卸の絞り込みはあるのか?
MSにとっては非常に気になるところだと思います。

これからも医薬品卸の絞り込みは続いていくと思います
特に外資系製薬会社が中心となって医薬品卸の絞り込みは行われていくと思います。
内資系製薬会社はこれまでの歴史や日本特有の文化を理解している経営陣が多いのですが、外資系はそういう経営陣は多くいません。
あの武田薬品でさえも社長は外国人ですので、絞り込みを行う可能性も否定できません。
そして、本国は医薬品卸が100社以上ある日本の現状を疑問視しています。
今後も熾烈な価格競争が続き、薬価を守れないとなれば、本国から強烈な指示が日本法人の経営陣に入るはずです。
そうなるともはや止めることは出来ません。
今回のGSKのメディセオ切りがどうなるのか?
これがもし成功したとしたら、他の外資系製薬会社が追随するはずです。
内資系製薬会社もそうかもしれません。
そうなってくるとMSのリストラも始まるかもしれません。
GSKがメディセオと取引停止する理由って何だろうか?のまとめ
医療業界を取り巻く環境は急激に変わっています。
今回のGSKのメディセオ切りは製薬会社と医薬品卸の関係に一石を投じることになるかもしれません。
もしかすると将来的にMSという職種がなくなることだって考えられます。MRも然りです。
そしてGSKの人は社内で早期退職が始まることも考えていた方がいいかもしれません。
医薬品卸の取引停止はコストカットの一つにすぎません。
次は人件費のカットのため、人員整理が始まるかもしれません。
「明日は我が身」と意識を高く持ち、今から何をしておけばいいか?を考えておく必要がありますね。
お忙しいところ最後まで読んで頂いてありがとうございました!
GSKがメディセオと一部の地方卸との取引停止を発表しましたね。
これには正直、ビックリしました。